ジョージア民話

蚤 と 蟻

この世の中では、人にも、家畜にも、獣にも、鳥にも、小さな虫にも、みんなに友達が必要です。あるとき、蟻と蚤が友達になり、一緒に旅に出ました。幸せいっぱいの蟻と蚤は、たくさんの山や野原を越えて、最後に、大きな沢にやって来ました。
蚤は「僕は沢の向こう側までとんでいくけど、君はどうする?」と蟻に尋ねました。蟻は「僕もとぶよ」と答えました。
蚤は沢をとび越えました。蟻もとぼうとしましたが、沢の真ん中にぽちゃんと落ちてしまいました。蟻はおぼれそうになり、「助けて。僕を見捨てないでくれ」と蚤にお願いしました。けれども、蚤は自分で助けることができませんでした。
蚤はとびはねながら豚のところに行き、

豚さん、あなたの硬い毛をくださいな。
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、豚に頼みました。豚はそれを聞いて、「君はどんぐりを持ってきてくれなかったから、毛はあげないよ」と言いました。
それで、蚤はとびはねながら樫の木のところに行き、

樫の木さん、どんぐりをくださいな。
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。樫の木は太い枝を振って、「君は私をからすから守らなかったから、どんぐりはあげないよ」と言いました。
蚤はまたとびはねながらからすのところに行き、

からすさん、もう樫の木のところに行かないでくださいな。
そうすれば、樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。からすはそれを聞いて、カアカアと鳴きながら、「君は私にひよこを持ってこなかったから、また樫の木のところに行くよ」と言いました。
蚤はあちこちとびはねて、くたくたでしたが、友達の蟻を助けなければいけなかったので、またとびはねながら雌鶏のところに行き、

鶏さん、ひよこをくださいな。
ひよこをからすにあげれば、
からすは樫の木のところに行かなくなって、
樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。雌鶏はコッコッコッと鳴いて、「君は私にきびを持って来なかったから、ひよこはあげないよ」と言いました。
蚤は困ってしまいました。けれどもほかにどうしようもなかったので、とびはねながら今度はキビが入った穴のところに行き、

穴さん、キビをくださいな。
キビを鶏にあげれば、
鶏はひよこをくれて、
ひよこをからすにあげれば、
からすは樫の木のところに行かなくなって、
樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。穴は口を大きく開けて、「君は私をねずみから守らなかったから、キビはあげないよ」と言いました。
蚤はすぐにとびはねながらねずみのところに行き、

ねずみさん、もう穴に入らないでくださいな。
そうすれば、穴はキビをくれて、
キビを鶏にあげれば、
鶏はひよこをくれて、
ひよこをからすにあげれば、
からすは樫の木のところに行かなくなって、
樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。ねずみは口をもぐもぐさせながら、大きな目を開けて、キイキイ声で言いました。「君は僕を猫から守らなかったから、穴に入るのはやめないよ」と言いました。
蚤はとびはねながら猫のところに行き、

猫さん、ねずみをいじめないでくださいな。
そうすれば、ねずみは穴に入らなくなって、
穴はキビをくれて、
キビを鶏にあげれば、
鶏はひよこをくれて、
ひよこをからすにあげれば、
からすは樫の木のところに行かなくなって、
樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。猫は目を細めて、前足でゆっくりひげをなでながら、「君は私に牛乳を持ってこなかったから、ねずみをいじめるのはやめないよ」と言いました。
蚤はまた元気にとびはねながら牛のところへ行き、

牛さん、牛乳をくださいな。
牛乳を猫にあげれば、
猫はねずみをいじめなくなって、
ねずみは穴に入らなくなって、
穴はキビをくれて、
キビを鶏にあげれば、
鶏はひよこをくれて、
ひよこをからすにあげれば、
からすは樫の木のところに行かなくなって、
樫の木はどんぐりをくれて、
どんぐりを豚にあげれば、
豚は毛をくれて、
その毛で縄をなって、
縄を沢に投げて、
友達の蟻を助けるんだ。

と、頼みました。牛はモーと鳴いて、大きな目でじっと蚤を見つめながら、「君は私に草を持ってこなかったから、牛乳はあげないよ」と言いました。
蚤はこんなにとびはね回って、ひざが痛くなり、汗もびっしょりかき、息もつらくなり、もう動けないくらいでした。けれども、蚤は友達を見捨てるわけにはいかず、なんとか草をたくさん引っこ抜いて、牛の前に置きました。牛は新しい草をおいしそうに食べて、蚤にミルクをあげました。蚤はミルクを猫にあげ、猫はねずみをいじめなくなり、ねずみは穴に入らなくなり、穴はキビをくれました。蚤はキビを鶏にあげて、鶏はひよこをくれました。蚤はすぐにからすのところに行き、ひよこをあげました。からすは樫の木のところに近づかなくなり、樫の木はどんぐりをくれ、どんぐりを豚にあげると、喜んだ豚は首の毛をぜんぶ抜いて蚤にくれました。蚤はすぐに縄をなって、沢に投げ、蟻を助けました。

悲しみは向こうに、喜びはこっちに、
ふすまは向こうに、小麦粉はこっちに。

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