2016年11月27日日曜日

冬に備えた保存食作り

昔、温室や冷凍技術がなかったころ、ほかの国と同じようにジョージアでも保存食が生まれました。ジョージアの多くの家庭では今も冬に備えて季節の果物や野菜で保存食をつくります。

ジョージアでは保存食づくりは春に始まります。5月にスモモの一種であるトケマリ(ტყემალი)の実がなります。まだすっぱくて青いですが、その実で緑色のトケマリソースを作ります。また、5月はイチゴのシーズンでもあります。イチゴはジャムかコンポートにします。
緑色のトケマリソース
ジョージアでは普通のジャムよりプリザーブドタイプのジャムのほうが上品とされ、人気があります。プリザーブドタイプのジャムでは果物の形が崩れていません。形が崩れないように果物にフォークで穴をあけたり、ミョウバンを溶かした水に浸けたり、弱火で長い時間煮込んだり、色々と工夫します。このようなジャムはジョージア語ではムラバ(მურაბა)と呼ばれます。

5月の末ごろから果物が続々実ります。
桜の一種スミミザクラの実で甘酸っぱくて濃い赤色をしたムラバをつくります。
白いサクランボの実は、一個一個種を取り除き、代わりにクルミを入れてムラバにします。
クルミはまだ青いうちにムラバにします。クルミのムラバはムラバの王様とも呼ばれています。
スイカも、皮の内側の白い部分を小さく切ってムラバにします。シャキシャキした歯ごたえのムラバができます。
秋になると、

セイヨウサンシュユ(学名 cornus mas)で甘酸っぱくてちょっと渋い味のムラバをつくります。
マルメロの実からは香りの良い琥珀色をしたムラバができます。
ジョージアの主婦たちはなんでもムラバにしたがります。トマトやナスのムラバ、バラの花びらのムラバをつくる人もいます。比較的最近ジョージアに入ってきたキウイのムラバもつくられました。

果物はやわらかくて、よく実っていれば普通のジャムにしてもいいです。ジャムにする果物はイチゴ、アンズ、イチジク、セイヨウスモモ、ベリー類などです。ジャムもムラバもビンに入れ、ふたをし、涼しいところで保管します。

ジャムとムラバの他にコンポートもつくります。水に果物をいれ、砂糖を加えて煮ます。アンズ、もも、プラム、マルメロなどでつくります。コンポートは煮沸し、密閉して保存しなければならないので手間がかかります。
スミミザクラの実のコンポート
秋に熟したトケマリの実からは赤いトケマリソースをつくります。この時期にトマトとベリーの一種であるブラックベリー(学名Rubus fruticosus)でもソースをつくります。

冬にできない野菜のナスやインゲン豆でも保存がきく料理をつくっておきます。

漬物も重要な保存食です。ジョージアの漬物はしょっぱくてすっぱいです。砂糖を使わずつくるので甘みがありません。きゅうり、青トマト、キャベツ、ニンニクなどでつくる漬物が典型的です。ここではジョージアの独特の漬物の一つを取り上げたいと思います。これはジョージア語でジョンジョリ(ჯონჯოლი)と呼ばれる、ミツバウツギの一種(学名Staphylea pinnata)です。ジョンジョリは低木で、花のつぼみができるころに若い芽を摘んで塩で漬けます。
市場の漬物売り場でジョンジョリも売っています。
地方によってはチーズを発酵させたり、燻製にしたりするところもあります。

市場で売っている燻製したチーズ
保存食は店でも売っていますが、選択肢は多くありませんし、家で作ったもののほうがおいしいです。多くの家庭で、少なくとも何種類かのムラバとトケマリソースをつくります。保存食があれば果物や野菜の少ない冬を乗り切ることができます。

2016年11月20日日曜日

ラグビー 日本対ジョージア戦

ラグビーワールドカップに向け、1112日にジョージアの首都トビリシで日本代表チームとジョージア代表チームのテストマッチが行なわれました。ラグビーはジョージアで人気のあるスポーツの一つです。ジョージア代表チームは2003年に初めてワールドカップに参加して以来だんだん強くなっています。人々は12日に行なわれた試合に興味を示し、当日客席はいっぱいでした。前半はジョージアのリードで終わりましたが、後半で日本が逆転し、試合は2228日本の勝利に終わりました。

このような試合結果について、試合後、ジョージア代表チームのミルトン・ヘイギー監督(ニュージーランド出身)は「私たちは与えられたチャンスを逃した」、ジョージア代表チームのマムカ・ゴルゴゼ主将は「私たちは相手と比べて力では優れていた。このような場合は負けてはならなかった」と言いました。

ジョージアのラグビーの専門家らは「ジョージア代表は負けたが、両チームは積極的に戦い、観客にとって面白いショーになった」、「ジョージアのチームの失敗を日本のチームがうまく利用した」、「ジョージアの選手たち一人一人は立派だったが、チームとして組織力に欠けていた」、「ジョージア代表にとって日本代表との試合はいい経験だった。欠点を直すためこれから練習を重ねなければならない」といった意見を述べました。

ジョージアにはラグビー以外にも柔道、重量挙げなどに肉体的に強い選手がたくさんいます。ジョージア人の力士もそうです。しかし、ジョージア人、またジョージアの社会全体には組織的に行動する意識が一般に低いように思われます。このことが今回のラグビーの試合にも表れていたようです。




2016年11月7日月曜日

ジョージアの暖房


ジョージアでは一気に寒くなり、週間前にはトビリシの郊外に雪が積もりました。冬が間違って2つ前の駅で降りたと冗談を言う人もいました。そこで、ジョージアでの暖房について書きたいと思います。
10月26日にはトビリシ郊外のツクネティで雪が降りました。
ジョージアの田舎の大部分では薪ストーブを使っています。簡単な薪ストーブは鉄でできた黒い箱で、4本の足がついていて、煙突があります。その中で薪を燃やすと、灰が下の引き出しに落ちます。ストーブによっては横にオーブンがついているものもあります。上には水の入った大きな鍋が常に乗っています。ストーブで部屋を暖め、料理をつくり、お湯を沸かします。私の祖父が住んでいたバクリアニという村にもこのようなストーブがありました。そのストーブのオーブンで焼いたジャガイモの味とモミや松の薪が燃えるにおいは今も覚えています。
スヴァネティ地方、薪ストーブの上でハチャプリが焼かれています。

ジョージアでは石炭ストーブや石油ストーブも使われています。特に高い山の村では燃料に牛のフンを使うところもあります。そこではフンを乾燥させて、冬のために準備しておきます。

私はトビリシ市内にある築100年以上の建物のなかで生まれ育ちました。その家には壁暖炉があります。冬はこの暖炉で薪を燃やすと、壁全体が温かくなり、壁の下のほうに空いた穴から吸い込まれた冷たい空気が暖められて上の穴から出てきます。このように2つの部屋を長時間暖めることができます。このような家はジョージアの町にたくさんあります。
私が生まれ育った家
私が住んでいた家にある壁暖炉
この暖炉は1970年まで使われていましたが、その後、ガスを燃料とするソ連製のセントラルヒーティングシステムが設置されました。台所に設置されたボイラーから各部屋のラジエーターにお湯が送られ、家全体が暖まります。1つの建物のなかでもシステムは家庭ごとに独立していました。町の古い家では主にこのようなシステムが使われていました。ソ連のときにできた新しい住宅地にはセントラルヒーティングシステムが建物全体にとりつけられていました。

90年代のジョージアではガスの供給が止まりました。そのため町でも多くの家庭で薪ストーブや石油ストーブを使っていました。セントラルヒーティングシステムは使われなくなり、だんだん壊れてしまいました。技術的にも古くなり、人々はシステムを勝手に取り外しました。

今ジョージアの町では、排気ガスを外に出す、壁にとりつけるガスストーブか、新しいタイプのセントラルヒーティングシステムが人気があります。電気カーペット、床暖房などはジョージアではあまり使われていません。

壁にとりつけられたガスストーブ
新しいタイプのセントラルヒーティングシステムの外部機械

各部屋の窓の下、ドアの近くなど冷たい空気が入るところに設置されるラジエーター
首都トビリシでは10月の半ばに暖房を入れ、4月の半ばに止めます。このシステムでいつでも家全体が温かいです。